急性の発熱や咳、痰、下痢、吐き気、全身倦怠感等の漢方的解釈とは?
漢方薬は慢性の病気の体質改善に使用し、徐々に効果がでてくるというイメージを持っている人が多いのですが、風邪の引き始めに葛根湯を使用するように、急性期の病気にも使用します。今回は、急性期の病気の漢方薬の 一般的な考え方を説明しようと思います。
1.急性の病気の漢方的考え方 邪気
昔の人は、目に見えない病気の原因(現在で言うウィルスや細菌等を含む)を「邪気」と呼びました。「邪」とは「普通ではない」という意味で、「邪気」の意味は「普通ではない気」という意味になります。いつもと違う空気のようなイメージでしょうか?決して怨霊とか心霊的な意味ではないのです。怪しい言葉ではありません。
この邪気(見えない病気の原因)が体の中に入ってくる事によって、風邪を引く、急性の病気になると考えられていたのです。
2.病気の段階 六病位
漢方では、その病気の原因「邪気」が体の中に侵入する段階を6つに分けて考えたのです。 太陽病・小陽病・陽明病・太陰病・少陰病・厥陰病。この6つの段階を「六病位」(別名:三陰三陽)と言います。分かりにくいので図にしました。
※往来感熱:微熱が出たり出なかったりする。
※正気:体の元気、正常な気、病気に対抗する気、免疫力的な意味、邪気と戦う気
邪気が体に侵入するイメージを図にすると・・こんな感じ↓↓↓
左から右へ、邪気が体に侵入していく感じで捉えると分かりやすいでしょうか?。右へ行くほど、病気をこじらせて行きます。だんだん、正気も少なくなっていくのは体が弱っている事を示しています。
カゼの引き始めで、葛根湯を使うような時期が、太陽病。 かぜをこじらしていくと小陽病などに移行していきます。 太陽、小陽、陽明は、まだ正気が邪気に勝っていて抵抗しているのですが、 太陰、少陰、厥陰は正気が邪気に負け、抵抗できていない状態です。
また、突然、少陰病から始まることもあります。
厥陰病を過ぎ、完全に邪気に負けて、正気が無くなったとき、死に至ります。
常に左から、右へ進むわけではなく、特に陽のかぜは、立体的に捉えます(六病位 図C)。 太陽病と陽明病の間や、太陽病と小陽病の間など、様々な病態が存在します。
急性疾患の病態は目まぐるしく変化します。その病態の時に合った漢方薬を服用しないと効きません。 急性期の病気の漢方治療は、病態に合ったものを、その瞬間に服用する必要があり、とても難しいのです。そのため、風邪などの急性期の病気の分野は、西洋医学の方が治療がしやすいと捉える漢方家の人もいるのです。
3.急性の病気の代表的漢方方剤
代表的な急性期の病気、主に風邪のような症状に使用する漢方薬を紹介しようと思います。薬機法の関係もありますので、その範囲内の記載にします。
麻黄湯
かぜ、インフルエンザ(初期)、ぜんそく、乳児の鼻づまり、哺乳困難の治療に使用されます。通常、悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ない人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 麻黄湯くすりのしおり
葛根湯
かぜの引き始め、鼻かぜ、炎症性疾患、肩こり、上半身の神経痛、じんましんの治療に使用されます。通常、自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のある人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 葛根湯くすりのしおり
桂枝湯
体力が衰えたときの風邪の初期の治療に使用されます。引用元:ツムラ医療用漢方 桂枝湯くすりのしおり
小柴胡湯
慢性肝炎における肝機能障害の改善、気管支炎・リンパ腺炎などの炎症性疾患、気管支ぜんそく、慢性胃腸障害、産後回復不全の治療に使用されます。通常、体力中等度で上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振、時により微熱、悪心などのある人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 小柴胡湯くすりのしおり
柴胡桂枝湯
発熱して汗の出ているかぜの改善、胃腸や肝臓などの機能障害に伴うみぞおちの痛みの治療に使用されます。通常、発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのある人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 柴胡桂枝湯くすりのしおり
白虎加人参湯
のどの渇きとほてりのある人の治療に使用されます。引用元:ツムラ医療用漢方 白虎加人参湯くすりのしおり
小青竜湯
気管支炎、気管支ぜんそく、かぜ、鼻炎、アレルギー性鼻炎・結膜炎の治療に使用されます。これらの疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 小青竜湯くすりのしおり
麻杏甘石湯
小児ぜんそく、気管支ぜんそくの治療に使用されます。引用元:ツムラ医療用漢方 麻杏甘石湯くすりのしおり
麻黄附子細辛湯
かぜ、気管支炎の治療に使用されます。通常、悪寒、微熱、全身倦怠、低血圧で頭痛、めまいあり、四肢に疼痛冷感ある人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 麻黄附子細辛湯くすりのしおり
桂枝加芍薬湯
腹痛を伴う排便異常、腹痛の治療に使用されます。通常、腹部膨満感のある人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 桂枝加芍薬湯くすりのしおり
五苓散
むくみ、二日酔、下痢、悪心、嘔吐、めまい、頭痛の治療に使用されます。通常、口渇、尿量が減少する人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 五苓散くすりのしおり
柴苓湯
水瀉性下痢、急性胃腸炎、夏バテ、むくみの治療に使用されます。通常、吐き気、食欲不振、のどのかわき、排尿が少ない人に用いられます。引用元:ツムラ医療用漢方 柴苓湯くすりのしおり
参蘇飲
かぜ、せきの治療に使用されます。引用元:ツムラ医療用漢方 参蘇飲くすりのしおり
素人では、なかなか判断できませんので、薬局、病院で相談されて購入することをおススメします。
※新型コロナウィルス肺炎が流行っていますが、これに確実に効果があるというエビデンスを示す記事ではありません。
4.漢方家の探し方
確実なのは、漢方外来の病院を受診する事、漢方薬局に行く事ですね。いろいろな流派がありますから、どの流派にあたるかは分からない面がありますけど・・。
普通のドラッグストアや調剤薬局で、漢方を専門に勉強した薬剤師がいるかどうかは、残念ながら、なかなか分かりません。ドラッグストアや調剤薬局に漢方薬生薬認定薬剤師がいる可能性は低いでしょう(僕は例外ww)。
今回の記事が参考になりましたら、幸いです!
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