風邪で抗菌薬を出してもらえない…薬剤耐性菌の問題で思う事
1.薬剤耐性菌に関する報道
2017年、薬剤耐性菌による死亡者が8000人にのぼると報道されました。
薬剤耐性菌とは、抗生物質の効かない病原菌の事です。
【薬剤耐性菌で8000人超死亡か】https://t.co/o8lDAxxKA8
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) 2019年12月5日
抗生物質の効かない薬剤耐性菌によって2017年に国内で8千人以上が死亡したとの推計を国立国際医療研究センター病院などがまとめた。全国規模で調べた研究は初めて。代表的な耐性菌2種を調査した。
抗生物質(抗菌薬)の効かない「薬剤耐性菌」によって2017年に国内で8千人以上が死亡したとの推計を、国立国際医療研究センター病院(東京)などの研究チームが5日まとめた。耐性菌の死者数を全国規模で調べた研究は初めて。代表的な2種の耐性菌を調査した。
耐性菌は抗菌薬を正しく使っても発生するが、使い過ぎによって生まれやすくなり、拡大が加速される。近年、耐性菌による死者の世界的増加が指摘されていた。日本でも深刻な影響を及ぼしていることが明らかになり、抗菌薬の適正使用など対策の徹底が求められそうだ。引用元:Yahoo!japanニュース
2.どのような人が被害を受けるのか?
代表的な耐性菌は、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」通称MRSAです。
黄色ブドウ球菌という菌は毒性は低く、抵抗力が普通にあれば問題無いのですが、体力や抵抗力がとても落ちている人(手術後の人や、体力の落ちた子供&高齢者)が感染すると、敗血症など重症化してしまう可能性があります。
メチシリン耐性(MRSA)の場合は、こうゆう時にメチシリンという抗菌薬が効かないという事です。(効けば問題ないのです)
このMRSAに感染した場合、唯一効果のある抗菌薬は、バンコマイシンです。しかし、このバンコマイシンにも耐性を持った菌が現れてきているそうです。
バンコマイシンに耐性を持たれると、どうすることもできません。
治療ができない事を指します。
3.どうして耐性菌が出てくるのか?
MRSAのような薬剤耐性菌が出現した原因は、今まで、抗生物質を安易に使い過ぎたからだと言われています。使い過ぎると何故、耐性菌が出現するのでしょう?
抗生物質を使うと、目標とする菌と周りにいる常在菌、すべて殺していまいます。たまたまですが、抗生物質にさらされても、偶然生き残る菌が、わずかに存在します。抗生物質を使いすぎると、「このわずかな耐性菌だけが生き残り、増殖する」という事を繰り返してしまうのです。
その他に耐性菌が増える理由としては、突然変異や、菌は遺伝子を交換するので、この耐性遺伝子を他の菌に伝達する事等があげられます。
4.風邪はウィルスが原因だから、抗菌剤使うなと言うけれど・・
数年前から、風邪のように抗生物質の適応のない場合は、抗生物質を出さないよう強く国から注意されるようになったので、あまり処方できなくなってきてます。
確かに風邪はウィルスが原因なので、抗菌薬は効かないのです。そのため、風邪では抗菌薬は処方するな、と言われています。
しかし、細菌による2次感染が確認され、蓄膿症(副鼻腔炎)や中耳炎等になった場合は、抗生物質が適応になります。耳鼻科に行くと抗菌剤が良く処方されるのは、そのためです。決して、安易に処方しているのではなく、必要だから処方されています。
この2次感染がやっかいですね。蓄膿症ってすごい辛いので・・。
5.抗菌薬を予防的に欲しいけど、ダメみたい
僕自身の体験を話しますと、寒気悪寒がして、透明な鼻水と鼻閉で耳鼻科を受診しますと、風邪と言われ、抗菌剤は出ませんでしたが、その夜に鼻水が黄色くなり、翌朝に同じ耳鼻科を受診すると蓄膿症と言われ、抗菌剤が処方されました。
僕は風邪を引くと蓄膿症になりやすいため、本音としては、最初受診した時に予防的に抗菌薬が欲しかったのですが、診断が下るまで処方してもらえないのですね。
最初から抗菌剤を飲んでいたら蓄膿症にならなくて済んだのに、という思いはあります。二度手間になってしまいますし、医療費もたくさんかかってしまいます。
しかし、薬剤耐性菌を増やさないためにも、あらかじめ処方してらうのは、ダメになんです。
そのため、風邪を引いたら、鼻水が黄色くなるのを待って受診するみたいな選択肢が、少し頭の中にありますね。
やはり、患者の立場からすると、抗菌薬が欲しいのです・・。
6.では、耐性菌を出さないためにどうすれば?
では、あまり抗菌薬を出さずに、風邪や副鼻腔炎、中耳炎を治療するには、どうすればいいでしょうか?他に選択肢はないのでしょうか?
蓄膿症
抗菌剤以外に、副鼻腔炎に適応のある薬は、漢方薬の「葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」と「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」があります。主に急性期には前者、慢性期には後者を使う事が多いのです。この2種類しかないので、効かないという人も出てきます。効く人は、抗菌薬がなくても治療ができる可能性があります。ひとつの選択肢として考える事はできます。
中耳炎
中耳炎は、漢方薬で適応のあるものは、僕の記憶ではなかったと思います。実際に効くかどうかは別の話で、法律的に出せるかどうか、効くと表現してネット上で記事にしていいかどうかという問題があるので、安易に書けません。
漢方医を受診すれば、漢方治療が可能でしょう。
風邪の初期
風邪の初期の段階で、葛根湯で治してしまうのもありです。しかし、治りきらない時もありますし、葛根湯が合う人、合わない人がいます。また風邪の症状や時期によっても選ぶ漢方薬が変わってきます。
僕の体験を書きますと、僕は葛根湯があまり効きません。蓄膿になりやすいので、葛根湯加川芎辛夷を使ってみても、ほとんど効果を感じないので、抗菌剤が欲しくなります。
一度試した事があるのですが、風邪の初期に「麻黄湯(まおうとう)」と「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」を合わせて飲むと、蓄膿には移行せず、ずいぶんましだった事があります。あくまで僕の場合ですので、自己判断で真似しないでくださいね。
7.漢方薬は自費にすべきでない?
花粉症の薬や、風邪薬、漢方薬で、市販薬と同じ成分が売られているものは自費になるかもしれないという話があります。↓参考記事↓
抗菌剤の使用を減らすために、一部漢方薬を使うのはありなんじゃないかと思います。しかし、風邪の時など、急性期の漢方薬の選択は、専門家でも結構難しいです。風邪に使う漢方薬は種類がたくさんあり、状態によって使い分けないといけないからです。素人が自分でドラッグストアで的確に選ぶのは、かなり難しいんじゃないでしょうか?ドラッグストアの薬剤師も、漢方専門の人がいるところは少ないでしょうし。
漢方薬を的確に選ぶには、医師の診察があった方が良いと思います。抗菌薬の使用を減らす意味でも、漢方薬は自費にしない方が良いと思いますけどね・・。
8.まとめ
風邪はウィルスが原因なので、抗菌剤は効かないが、2次感染による蓄膿症や中耳炎の治療には抗菌剤が必要です。患者としては、予防的に抗菌剤が欲しいが、予防ではもらえないのです。でも、やっぱり抗菌剤が欲しい・・。一定の代替策として、漢方薬があります。でも自費になるかもしれない・・という話でした。
あっ!もうひとつ薬剤耐性菌に対する対策がありました!
従来の抗菌薬に菌が耐性を持つなら、人類が新しい抗菌薬を常に開発し続ける事ですね・・。まあ、イタチゴッコということに・・